「人間関係とかない、ストレスフリーな仕事したいなぁ」
愛知県名古屋市の比較的都心で生活する僕は、コンクリートから伝わるひんやりと無機質な触感に少々辟易していました。
岐阜県出身・ド田舎育ちのウエダとしては、たまには大自然でのんびりしたいものなのです。
新卒の頃なんか、地元の友達と岐阜の源流を探す旅と称して、弁当だけもってひたすら川を上るという脳みその過疎化が始まっているんじゃないかという企画をやっていました。
結局あまりにも崖が多すぎて、「体験隊は大事を取って引き返すこととした」という結論に至った恥ずかしくも誇らしすぎる企画です。
それはさておき令和6年4月。
日課になっている副業の情報収集をしつつ、なんか「田舎」「大自然」というキーワードと繋がる副業はないかと思って指先でSNSの波をサーフしていた折、興味深いサービスを見つけました。
それは「ジモベジワークス」という緑黄色の文字たち。
ジモベジワークスとは農業専門の求人媒体で、わりと最近にできたサービスのようです。
農業の繁忙期と閑散期の必要人員ギャップを埋める短期バイトを募集しており、新進気鋭ならではの「農家を助けたい」というビジョンと、1日ごとに応募が可能なインターフェイスが好感触でした。
そんなわけで
・田舎でのんびり仕事したい
・新進気鋭のサービスの気概に触れたい
・なんかネタになりそう
などという浅はかな気持ちを胸に、3回くらい脊髄反射を繰り返しほぼ即答で応募してみました。
こういう気分転換ができる事も副業の面白さですね。
この記事は、ウエダミライが副業を楽しむ道中の体験記です。
副業に助けられ、副業の素晴らしさを伝えたい僕が、副業をする中で感じた事を発信します。
今回の仕事の概要は以下の通りです。
仕事概要 | 農作業の補助 |
案件概要 | 水稲作業(春) |
日程 | 令和6年4月~5月 8時~17時 4日間エントリー |
場所 | 愛知県某所 |
収入 | 給与所得:時給1300円 |
作業内容 | ・ハウス内での種まき ・苗の積み替え ・除草作業 ・田植え(田植え機への苗の補充) ・2tトラックの運転 (一部抜粋) |
農業バイトに抱いていた率直なイメージ
「農業バイト」という5文字に皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか。
歯に衣着せずに言わせてもらうと、個人的には以下のようなイメージがあります。
・作業がきつそう
・汚れそう
・頑固な農家さんとのコミュニケーションが不安
上2つはしょうがないことだと思っています。
そもそも肉体労働だし重たいものもたくさんあると思われることからしょうがない。なんなら筋トレになるなら多少きつい仕事くらいが適正負荷でしょう。
ただし3つ目のイメージ、これは本当に不安でした。
皆さんが農家さんにどんなイメージをお持ちか分かりませんが、田舎出身で祖父母が百姓の僕からすると農家さんの人間性というのはある種ガチャなんですよ。
麦わら帽子、首にはタオル、水筒は決まってフタがコップになるタイプのいつもニコニコやさしいおじいちゃんタイプの農家さんもおられれば、
JAのロゴの入ったキャップにツナギ、足元は泥で汚れた地下足袋をばっちり履いて、口ベタ職人気質タイプの人もおられるなど、なかなか人間的には合う合わないが激しい。
頑固&マイペースな方だと
「おそいな!」
「はよ備中もってこい」
「もうオレやるからいいわ」
などと職場がぴりつく事も考えられるんです。
怒ってるのかそうでないのか判断つかない。ホルモンの焼き加減くらい分かりづらい。
僕が食品メーカーに勤めていた時、当時の上司でフジイさんという方がいたのですが、色覚異常、いわゆる色弱だったんですよ。
打ち上げで焼肉いったとき、色弱なのに肉焼き担当をするもんだから丸焦げ以外は全部判別不能になっていました。
赤身が本当に赤色で出てきますからね。
農家さんとコミュニケーションとれるかはそれくらい死活問題。
そんな不安をひっさげていよいよ農業初日を迎えるのでした。
いよいよ初日、不安は払しょくされる
初日、朝7時すぎ。
天候は晴天、マンションから見える四角い青空は、車が進むにつれて視界いっぱいに広がっていきました。
自宅から田舎方面に約40分。
少し早めに出て入念に現地チェック。心配はなさそうです。
最近のコンビニおにぎりは高くなったな等と考えてツナマヨを食べている間に集合時間の8時前になったのでした。
先ほど言った通り、農家さんの内面事情にかなり不安に思っていた僕。
しかし、それは早くも払しょくされることになります。
「車はあの黒い軽の前に停めてくれたらいいですよ!」
農家さんのおうちは昔ながらの瓦のおうち。その横にビニールハウスがいくつか並んでいることから集合場所は明々白々ですが、駐車場所は分からない。
そんな僕に話しかけてくださったのは、40歳前後くらいの色黒の宮川大輔みたいなお兄さんでした。
「若い人多い、そしてメッチャ気さく」
それが僕のファーストインプレッションでした。
JAのキャップに地下足袋、スーパーがんこ一徹でなんなら今日一日「見て覚えろ」と背中を追い続ける結末を覚悟していた僕でしたので、気さくに話せることが何よりの安心材料でした。
「お、初体験だねー!」
そう若干ギャグ気味に快活に話しかけてきたのは、若槻千夏から化粧気をとったかのようなお姉さん。(褒めてる)
どうやら農家さんのお嫁さんらしい。
僕が利用したジモベジワークスは、スマホでQRコードを読み取ることで出退勤の打刻ができるんですが、そのやり方を懇切丁寧に教えてくださいました。
若槻さんは優しい。が、農家の男連中を取りまとめているだけあって、ラピュタのドーラみたいなサバサバ感を感じぜざるを得ません。
取りまとめられている男集の中に、オリラジ藤森からチャラさを抜き、代わりに純粋培養した優しさを注入したみたいなお兄さんがいますが、後に田植えで非常にお世話になるのでした。
農家の主人である旦那さん、若槻さん、宮川さん、藤森さんに主に仕事を教えていただきながら、農業のバイトは土の匂いとそよ風のなか始まったのでした。
1日目、除草。それはブレーキペダルを死守する仕事
僕が勤めた4日間のうち、1日目は除草、2~4日目は田植えになります。
タイムスケジュールは以下のかんじ。
- 8:00集合、挨拶
- 8:15車で出発、田んぼの水張り確認
田植えに最適な水量になるように確認・調整。いくつもの田んぼを巡る。
- 9:00畦畔(田んぼの外側の小道)の除草
1人が2tトラックを運転しながら、もう1人が荷台の除草剤タンクから散布。
- 10:30小休憩
コーヒーをもらって満悦。
- 10:45作業再開
畑の中に野生のキジを見つける。自然を感じる。
- 12:00昼食
持ってきた弁当を食べながら農家さんと談笑。
- 13:00作業再開(午後からは狭い畦畔)
狭い畦畔はタンクを背負って散布。スーパーマリオサンシャインみたいな図。
- 14:30小休憩
コーヒー2本目をもらいさらに満悦。
- 15:00突如現れた〇〇討伐
- 16:45作業終了、片付け
- 17:00退勤
- 8:00集合、挨拶
- 8:15ハウス内にて育っている苗の積み替え
地面にある苗の塊をラックに差していく。
- 9:00田んぼに到着、田植え機設定とレクチャー
やる事は田植え機に苗と肥料などを補充する事。
- 11:00別の田んぼに移り、ひたすら田植え機発進
- 12:00昼食
アルバイト仲間の方もいてみんなで談笑。
- 13:00作業再開
午後からも田植え機の補充作業。
- 15:00小休憩
- 16:30片付け、洗い物、翌日の準備
- 17:00退勤
1日目は除草作業。
この日は二毛作でやっているらしい小麦の畑を巡りました。
除草と言ってもやることは除草剤の散布です。
場所は畦畔(田んぼの隅のあぜ道の事)。
ここに雑草が生えると良くないんですって!
2tトラックにお風呂くらいの大きさの除草剤タンクを積み込み、宮川さんと出発です。
そして笑顔の宮川さんから質問を投げかけられます。
「ウエダさん、トラック運転できる?」
僕にとっては「一人プリクラ撮れる?」くらいの感覚の質問でした。
たぶんできると思うんだけど、実行に移す事はギリギリためらう良問。
普段普通車は運転しているけど、知らない道で知らない2tトラックを運転する怖さ。
ただこの日の仕事は1人は運転、もう1人は荷台から除草剤散布するとスムーズに終わるっぽい。
そんなわけでこの日は1日除草(時速2kmくらいで田んぼのあぜ道を綱渡りする仕事)となりました。
さえずる小鳥、歌うカエル、さざめく小麦の葉。そしてツりそうになる右足首。
ブレーキペダルをこんなに神妙に動かす日が来るなんて。
バラエティ番組でタカハシレーシングの人がドリフトのときのブレーキがあーだこーだ言っている所を見たことがありますが、こういう事だったんだと腹落ちしました。
その後も宮川さんと田舎のラーメン屋の話、バイクの燃費はとんでもなく良いという話(僕も少し前まで中型運転してた)、農家の価値観の話など、普段オフィスワーカーをやってたら聞くことのできない話をたくさんしながら1日目は終わりました。
本当にためになった話は後述します。
初日が終わったときの率直な感想を一言でいうと
「楽しかった。」
適度な疲労感、おいしい空気で換気された体内、人とのつながりの中で心身が前向きになったような気がしました。
2日目、ハイテク★TAUE★
2日目は田植え作業。
農家の春の代名詞といえるのではないでしょうか。
そよ風に揺れる小さな苗が、泥の上の薄い水面に並ぶ姿。これぞ米農家という、まさに田園風景です。
「今日は一日、薫る風を感じながら丹精込めて稲を植えるかな」
などと思っていた午前8時、作業はまさかの筋トレからスタートでした。
正確にいうと、地面に置いてある苗を金属製のラック(横4列、縦20列くらい、奥行き4列程度の2mくらいの棚)に収めていくという作業。
苗の根は土がついており、たっぷりと水を吸っています。これは重い。2mほどの高さに持ち上げるのはキツイんです。
知ってる。これはサイドレイズだ。
軽くバケツリレーをしながらラックに収めていくのですが、リレー第一走者の若槻さんが速いんですよ。異常に。(褒めてます)
ゼッタイSだ。そんなことを思いながら田植えにそれぞれ散っていくのでした。
先ほど言いましたように、僕は田植えは手作業しか見たことなかったのですが、出てきたのはこちら。
田植え機!!!
「いや、それくらいは当たり前でしょ」
そう思うじゃないですか。でもこれ、全自動なんですよ。
機械が自分で田んぼに線を引いて、その上を自動走行して苗も自動で植えていくんです。
やっちゃってる、クボタ。
初めて自動で走行する姿を見たときは感動して写真撮っちゃいましたからね。
ちなみに通りかかった外人まで「シャシン、イイデスカ!」て言ってきた。
さすが世界のクボタや。
そしてその横の畑では何か飛んでました。
近未来的な白い流線形、まるでネオレスト。最新トイレのネオレストが飛んでる!と思ったらドローンでした。でっか。
除草剤を散布しているらしい。
いや僕のブレーキをしばき続けた1日作業、2時間で終わっとるやん。
つまり何が言いたいかというと、最近の農家さんはかなり進化しています。
そのハイテクさを間近で見られたのは本当に良い経験でした。
その後も、脱サラしたという藤森さんから今までの仕事になくて今の仕事にあるものの話などを聞いたり充実した1日。
楽しかったな、2日目も。
1日目外伝、ヌートリア討伐(BGM:ヤシマ作戦)
1日目の夕方ごろ、これは伝えておきたいと思う事変がおきました。
田んぼ周辺て水路が張り巡らされているんですが、そこになんか浮いているんですよ。
なんか大きさ60cmくらいのでっかい赤福みたいなのが水路に浮いてる。
時々モゾモゾと動きつつ、赤福が浮き沈みしているんです。
野生のヌートリアでした。
もしもラッタが現実世界にいたらこんなキモイんだなぁと思いました。
ちょうど宮川さんと移動していた時だったんですが、宮川さんはなぜか楽しそうにコメントします。
「ヤるときが来たかぁ」
たぶん臨戦態勢だコレ。素人ながらにその殺気を感じ取りました。
その後、買い物かごと肥料袋、まな板みたいな板を取り出してきた宮川さん。
僕にはスコップ一つを渡し、「そっち行ったらヤってね」と意味深な言葉を投げかけてきます。
鉄腕ダッシュでTOKIOはこういう怖い思いしてるんだ。なぜかTOKIOへのリスペクトが頭を駆け巡りました。
赤福は依然として水路ですみっコぐらし。静かに水路に降りていきます。
頭の中ではエヴァンゲリオンのヤシマ作戦のBGMが離れません。
作戦はこうです。
①宮川さんが上から買い物かごをかぶせて生け捕りする
②ミスったら撲殺する
非常にシンプルでした。
「いい!?」「いいね!?」と頻りに確認をする宮川さん。
自信をもって「いいです!!」と言える日なんて来ることはないだろうと思いながらスコップを構える僕。
せーの
その刹那水しぶきの中で変な鳴き声がし、次の瞬間には「松島屋」という何ともローカルなスーパーの買い物かごに入れられたヌートリアの姿がありました。
そのあと役所に生け捕りにしたヌートリアを買い物かごごと持っていきましたが、なんとも頼りないちびまる子ちゃんの山根君みたいなお兄さんがシュールに買い物かごを持って役所の奥に消えていきました。
職員さんの「なぜ買い物かごなんだ・・・」という困惑した表情が何とも忘れられません。
こうしてヌートリア討伐作戦は成功したのでした。
これは家でWEBライターしてたら経験できません。
本当に来てよかったなと思った体験です。
農家さんの考えに触れて感じた大切なこと
上記で書いてきた通り、農業の仕事中は農家さんとたくさんコミュニケーションがとれます。
話しているうちに、農家さんの根底にある気持ちは①僕みたいなオフィスワーカーとは全然違う事、②自然と向き合う中で培った強い考えがあることに気づきました。
①「ここまでやればいい」は無い。ただ、作物は正直。
皆さんが会社に勤めていたり、自身の会社で仕事の成果物を納めるとき、「ここまでやってあればいい」というラインがほぼほぼあるのではないかと思います。
例えば
「一通り説明できる資料になっていること」
「顧客を満足させる提案であること」
「生産目標」
「売り上げ目標」
など仕事によって様々ですが、ある程度「ここまでやれば完成」というラインがあると思います。
でも今回宮川さんと話していた時、
「やろうと思えばキリがない」
「やれることは無限にある中で、自然と過ごしてどこで折り合いをつけるかを考える」
という事をおっしゃっていました。
どこまで雑草を減らすか、どれだけまっすぐ苗を植えるか、どれだけ適切な量の水を張るか、自然の中で作業をするにあたって、それらが人間の力で100%一様にできない事は素人でも分かります。
100%に近づける努力はできますが、サボっても誰も咎める事はできません。
でもその頑張りを計るバロメーターは一つだけあり、それが「作物」だと言っていました。
もちろん100%頑張ったから100%この上ない「作物」ができるかと言ったらそうではないですが、「作物」は正直だと宮川さんはタバコをふかしながら話しておられました。
②どんなに頑張っても自然現象は受け入れるしかない
社会で生きるにあたり、
「こうあるべき」
「なんでこうならないんだ」
という虚しさ・もどかしさを感じる事があるのではないでしょうか。
それはきっと、自分の考えで別の誰かの動きをコントロールしたい、自分の考える”常識”に落とし込みたいという支配欲に近い思いが交錯しているのだと思います。
でも現実には誰かの行動を思いのままに変える事は出来ない。そのギャップに齷齪しストレスを感じてしまう人もいると思います。
田植えを一緒にした藤森さんは、10年以上イベント運営の会社にいたそうですが、数年前に農家に転職。あらゆる考え方が変わったと言われていました。
変えられるものと変えられないもの。
農家さんはその境界線がハッキリしているからこそ伸び伸びされているのではないかと思います。
変えられるもの、それはもちろん自分の行動です。
「今日はこうしよう」
「この工夫すればもっとよい成果が得られるはずだ」
「次はこうしよう」
一方で変えられないもの、それは自然です。
「晴れを雨にはできない」
「強風を止ませることはできない」
「冷夏や凶作はどうすることもできない」
自然現象は受け入れるしかないという事を藤森さんは言っておられました。
オフィスで働く人は、なまじ目の前の他人のことを変えられるかもと思うから、そこにストレスを感じてしまいます。
しかし農家さんの目の前にあるものは自然そのもの。
変えようと考える事自体が不毛なのです。よってそこに過度なストレスは生まれません。
そういった、ある種悟りの境地のような思考法は日々のオフィスワークに忙殺されていると考えることすら忘れてしまいます。
そこに気づけたこと自体、この農業の仕事に出会えたメリットだと感じました。
ヒュンケル・・・農業バイトはいいぞぉ
そんなわけで農業専門求人サービス「ジモベジワークス」で副業農業してみました。
農業バイト、すごくいいなと思いました。
①自然の中で体を動かし、リフレッシュになる。
②適度な負荷が良い運動になる。
③農家さんから普段聞けないような話が聞ける
僕の感じた3大メリットはこれらかと思います。
今後も繁忙期があればぜひ参加してみたいなと思っています。
自然を感じたい、かつお金も欲しいという方。
副業で農業はめちゃくちゃアリですよ。
ありがとうございました。
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